遺失物
2007年1月30日は平均的な平日であった。2130分出庫して、平均的な時間単価の売り上げに、平均
的無線回数。
午前27時、最後には丁度良い、お得意様から電話が入り、平河町の指定場所へ向かう。
横浜までの方なので、
霞ヶ関料金所から首都高で東名を目指す。
27時を回っており、高速はガラガラ。30分で消化し、28時30分には帰庫だな。と考えつつ用賀を通過し、
東名へ。追い越し車線を走行し、東名料金所まであと数キロ地点の所で前方の路面に染みの様な白い物を発見!
よく見るとその物体は立体的であり、高さは15Cm位か?表面積は半畳程あり、かなり質量のある物質と思われた。
もし踏むとある程度の衝撃は覚悟しなければならない。回避動作を発見から衝突までの1.5秒間、必死に
考えた。あいにく右側は中央分離帯であり、左側の走行車線は長距離トラックがいた。その現状範囲内での
ハンドル操作で回避不能と判断。残る回避術は加速か減速となるが、この場合加速はあり得ない。
減速しても絶対に止まれない距離だし、減速しながら物体に乗り上げる行為は危険だ。考えた末、
加減Gをかけずにそのまま乗り上げる。つまり、何もしない事にした。厳密に言えば何もできなかった。
ドーン!の直後、
ドライブレコーダー「事故録」の動作開始音がピ〜と鳴り響く。踏んだ瞬間に直感的にあれはコンクリートの塊だ
とわかった。右側前後サスペションのダンパーはフルストロークの上限を完全に超えていて、下から突き上げる衝撃は
凄まじかったが、幸運にもジャイロ効果か、衝撃後も車体は安定しており、軌道を逸する事なく走り続ける事は
可能だった。とりあえず左側通行車線に移り、制限速度以下まで速度を落とす。そのまま被害の発生有無確認を耳や
感触で行いながら走行。
う〜ん。問題ない。本来の目的である旅客輸送を完結させる。「車大丈夫?」と暖かいお言葉を頂いたが、
私はお得意さまに御迷惑をおかけする事態に至らならなかった事が何よりであった。
実車完了後、ティアナから降りてマジマジと見たが、外装は全く問題ないが下回りは夜中なので暗くて見えない。
翌日の点検とならざるを得ない。そこであの物体の落とし主に対して怒りが込み上げた。
とりあえず警察の高速隊へ電話。「直ぐに除去します。もし、破損等なにか損害が生じた場合、落とし主が特定できればその方に請求できますが、貴方にも前方不注意の過失があります」と言われた。
まあ予想のどうりの返事で連絡した事がバカバカしくなった。
コンクリートの塊の持ち主なんか特定できるわけないし、死亡事故でないと調べもしない。あとで考えると当たり前の
事だ。しかし、前方不注意ってどうなの?大きな物(例えば人間)ならともかく高さが低い物なんかまじかに見ないと
何なのかわかりませんよ。
翌日、下回りを点検したが、目視によるダンパーからのオイル漏れなし。サス各部の亀裂や変形なしではあったが、
サス周りのオーバーホール時期が早まったのは確かだろう。
翌日以降、あの時乗り合わせたお得意さまからの電話はない。週平均3万円の方であり、月だと12万、年144万円を
遺失物のガレキを見落とした代償として失う事となるかもしれない。
検証!落下物
資料=事故録静止画像
静止画像は最初に目視確認ができたと思われるタイミング。
この時点では路上のシミなのか、物体なのかはっきりしない感じでした。
事故録G(衝撃)観測まであと約1.6秒前の静止画像となります。
事故録G観測まであと約0.9秒前の画像、この時点でやっと立体的物質だと判断できます。
事故録G観測まで、あと約0.3秒前の静止画像。
物体であるとの認知が遅れた為、危険性を感じてから、判断操作の時間がまったくない状態だった。
画像で見ると
実際に見た感じより小ぶりに見えるが、大きさだけで危険性を判断するのは間違いである事。
衝突時の影響は大きさでは無く質量が作用する事を改めて認識できた。
道路には何か落ちてる物だと常に意識してれば慌てる事はないだろう。
右輪と左輪で跨げる大きさにも見えるが、慌てた急ハンドル
操作よりはおとなしく乗り上げた方が、結果として良かったのかもしれない。