お米の日
 目的地遥かなり! 茨木編

7月も残す所あとわずかと迫ったとある日。
連日蒸し暑い日が続く割りには何故かいまだに梅雨明けしてない東京地方。
最近、関東のどこかで発生する夕方の集中豪雨で朝夕が涼しくなるのは救いか?
しかし、出庫時に大雨は困ります。車庫へ行く前に降りだすと、雨が上がるまで待ってしまうか、休んでしまう今日この頃でございます。

この日は個タク村の遥か東南方向(都心方面)で雷がボトボト落ちてるのをクロとの散歩中に見て取れました。 「いかん。あんなんが個タク村までやってきたら月末の大事な追い込み期が運休になってしまう」と、嵐が来る前の出庫を瞬時に決断し、通常より早く家を出る事にしました。 雨がポツポツ状態の中、無事に車庫へとたどり着き、エンジンを起動させ都心を目指します。

驚く事に新目白通りをわずか数キロ上った時点で雷雨です。 身の危険を感じる程の…。

とりあえず先発してるだろうと思われる先駆けご同業衆に現在地と現況を知らせてほしいメールを複数送信。 5件の返信を受けるもどれも似たような返信でした。


   1-雷雨です。新橋2件
   2-雷雨です。秋葉1件
   3-雷雨です。客足は止まりました。赤坂1件
   4-雷雨です。雨強く、人は歩いてません。四ッ谷1件

「こりゃあ流しのタクシーを拾うお客様はいない位の雨だから無線で呼ぶなぁ〜。忙しくなるぞ!」と判断。

こんな悪天候下で配車になったらたまらないので、とりあえず無線の配車登録を解除し、先行車にくっついてノロノロとひたすら上り続けました。 まずは無傷で都心へ進入する事を最優先とします。
明治通りを超えた付近から雨は落ち着き、「ふぅ〜助かったぁ〜」と一息ついて再度配車登録します。 基本的に悪天候時の迎車進行は嫌いと言う事ですね。(理由は面倒くさいから!)

一番最初に接近した市ケ谷エリアでエリア登録に切り替えます。

すると市ケ谷待機1台目。

さっきの雨でかなり配車本数があったからかは分かりませんが、とにかく市ケ谷花番を取れました。 登録しつつ赤坂を目指しますが、市ケ谷にとどまり続けるか悩みながら走ってました。

すると

なんと市ケ谷登録後1分以内で配車になります。
スゲーいー感してるな〜。最近の長い待機時間考えたら夢のようだなぁ〜と 配車先の某一流製紙メーカー接待処へ進行します。  ちなみに5台口。

3台目に現着し、待機します。最後にやってきたのが大ベテランのお友達で暇は潰れました。

この配車について話を聞くと

1ここは滅多に呼ばない場所なので進行先の統計データがない。
2この配車はエリア登録車では足りず、応答モードでも呼んだそうです。
     (その本人も応答モードで配車になった一人)

1はともかく、「なんだぁ〜。天才的感で登録した結果だと思ってたのにぃ〜。」と、少し残念ではありましたが、そんな会話中にお客様が出てこられます。

3台目に着いたんで3人目の初老のお客様を実車。
接待処だけあり、先の戦争末期の学徒出陣を彷彿させる盛大なお見送りの中、出発!


お客様
「う〜ん。明野まで行ってもらおうかな〜。いーですか?」

( ̄○ ̄;)
いや〜困りましたね。地名がさっぱり分からないので…。

逆にこれで分かるタクシー乗務員は東京にどの位いるのかな?レベルです。 とにかく久々に行き先を告げられても全く理解不能な局面に遭遇しました。
実はこのような局面が私は大好きです。何がかと申しますと当たり障りなく、手がかりとなるキーワードを聞き出して進行先を特定する作業がとにかく楽しい!

以下が今回のやり取り。

お客様
「う〜ん。明野まで行ってもらおうかな〜。いーですか?」


「どちらでも指示頂ければ進行致しますよ」

お客様
「では明野まで送ってください」

私 「分かりました」 「ところで明野だと最寄り駅はどこでしたっけ?」 ←と牽制します。
この場合の地雷は行き先の地名が駅名でも存在する事。あまりにマイナーな地名の為今回は実在しないに賭けました。

お客様
「下館になります」


( ̄○ ̄;)「??」

これまた分かりません。 分からない地名と最寄り駅名が2つ並びました。

しかし、分からない事が紐解く鍵とも言えます。 この下館駅の所在地は全く分からなかったですが、個人タクシー地理試験勉強時に都内最寄り駅(近郊含)を丸暗記した私が知らないと言う事は都内の可能性は極めて低いと言う事。 つまり郊外以遠の可能性が高いと言う重要なヒントを得た事になります。このタイミングで始めて許される質問をします。


「あ〜。下館になりますかぁ。あそこだと高速を利用される場合、どこで下りるのが最適なんですかね?」
  ↑ 遠方なら高速で行くのが普通だし、「最適」と言う幅のある単語を用いるのがコツ。

お客様
「適当に高速上がって谷和原で下りてください。もし寝てたら左の出口から出て15分位走っ た所で起こしてください」


(o^∀^o)「かしこまりましたぁ〜。」

目的地が茨城県と言う事と常磐自動車道通行OKで出口は谷和原だと言う事が判明。
したがって現在地からの最適な首都高入り口が西神田と確定。 と言うか、これだけ聞き出せれば着いたも同然です。
谷和原を下りて左方向出口へ進み、信号に止まったらナビで下館駅を目的地指定し、目的地周辺画面で「明野」と言う地名を探し出せれば全ては解決します。 寝てる間に…。

ガラガラの首都高速道路を経由し、常磐自動車道の谷和原インターで下りて水海道方面へ進路をとります。

で、最初の赤信号待ち。

チラっと後部座席へ目をやるとお客様は爆睡されてたんで迷わずナビに下館駅と入力し、
  「 検索 」
判明したコースはこのまま一本道を進めばたどり着けると分かり、少し拍子抜け。
驚いたのは目的地までの距離。

ここから38キロと表示されてました。

「え〜下道でそんなに走るのかぁ〜」と思いつつ、目的地周辺の画面表示させて明野と言う地名を探します。 するとありました。下館駅のやや南に明野町と言う地名が…。
とりあえず画面上で、町の中心部っぽい辻にある明野町役場とやらにロックオン
ここかぁ〜。(汗)しかし、東京都内からここへ行くのに「明野へ行って下さい」と真顔で言うかなぁ〜普通…。 下館駅前のタクシー乗り場からなら通用するだろうけど…。こりゃあ試されたな。 とか考えながら延々と一本道を進みます。

 この道。
水海道を過ぎたら街灯は殆んどなく真っ暗です。山とかの特徴ある地形が左右にはなく、ひたすらまっ平らな道を進みます。 物凄く地理的位地関係が掴みずらかったです。
恐らくナビがないと方向感覚を失いそうになる広大な平野が左右に広がり、 そこには夜間見ると湖か海かも分からないよう広大な闇(田園)が広がっており、尚更真っ暗です。
まるで宇宙空間を進行してるような錯覚に陥りました。
見掛ける明かりは希にすれ違う対向車の灯りと、これまた希に意味なく 存在する信号機(数キロ感覚)の明かり又は遥か遠方に見える民家の灯りであり、まるで湖畔の対岸に見える灯火に見えました。

とにかく田んぼが凄い。まっ平な地形が延々と広がる印象を受けました。これだけ広大な田んぼを張れる関東平野は改めて凄い。 この一帯が関東平野の一角にしか過ぎないとは思えませんでした。
昼間に訪れるとまた違う印象を受けるかも知れませんが…。
このまっ平らな場所から昼間は見えるだろう筑波山が信仰の対象になり得た事は容易に想像でますね。

そーこーしてる内に目的地まで8キロに近づいてました。 仕事で来てる事を思いだし、お客様に声をかけます。

こんな道をひたすら進み続けました。  (帰路時に撮影)


「かなり近づきましたが、どーされます?」
 ↑と意味不明な定型文を読み上げます。基本的に寝ぼけてるので何を言ってもおんなじです   し、目的はお目覚めして頂く事

お客様
「お〜よく寝た。ここはどこ?」


下館駅まで約9キロ手前付近です」

お客様
「よくここまで道が分かりましたね〜。」


「一本道じゃあないですか〜。明野町は役場の方ですか?」

お客様
「え、役場を知ってるんですか?」


「詳しくは分かりませんが、役場位は知ってますよぉ〜。」 (°□°;)  (脂汗)

お客様
「へぇー。さすが個人さんだね。その役場の近くなんであとは案内しますよ。」


「よろしくお願いします。」
(と、さくさくっとナビを解除。HDDナビで良かった。DVDでフリーズするとカッコ悪いです)

この後、役場を知ってたのが嬉しかったのかもしれませんが、「いー所ですねぇ〜」の
私の一言から喋る喋る。ご当地自慢を! (ずーっと寝てたくせにぃ〜)
もちろん全てを肯定し、聞き役に徹してる内に奥様の出迎えるご自宅着。

会話の中で植物の光合成について話した為か、「運転手さんも降りて庭を見て行ってくださいよ〜」と言われ、 他人様の庭で植物のウンチクを聞かされました。20分程茶を飲みながら…。

帰ろうとすると「お茶をどうぞ!」と奥様から帰りの車内飲用にペットボトルのお茶まで頂きました。 ら 「おい米もって来い。10キロのヤツ」 と奥様に言われてます。
「運転手さん米持って帰んな。明野で採れたやつだから美味しいよ」と言われるまま、この業界に入ってはじめてお米を頂きました。

帰り道。

コンビニ画像

初めて見るコンビニでトイレを借りて少し休憩。(画像はそのコンビニ) この時に気がついたのですが、えらい涼しい。



ティアナの温度計で確認したら22度でした。同じ温度計で東京は26度でしたので温度差は4度となります。 空気は美味しいし本当に良い所です。夏に関して言えば…。

快適温度の中、しばし立ちすくんでると闇夜を明るく照らす見慣れないコンビニの看板周辺を飛行する昆虫に気がつきました。かなりの複数を…。
「なんだこりゃあ」と近くで見るとデカイのは全てカブトムシでした。 「お〜これはお土産にしよう。」と落ちてくるのを待ちますが、落ちて来るのはなぜか全てメス。 「どーせならオスが欲しいなぁ〜。」と20分以上張りましたがダメでした。  残念…


今回のゲット品の品々

  



後記

 楽しい2008年夏の思い出です。不思議と遠くの親戚の家にでもやって来たような気分に浸れましたね。 思い出は心のアルバムにしまい、漁場に戻るべく来た道を戻りました。

今回のような行き先が全く分からない場合。 「すいません。道わからないんで教えてください」なんて言うのはストレートではありますがあまりにも他力本願なような気がします。
長年タクドラをやってると、ちょっとしたヒントで分かったりします。 キーワードを聞き出し、探りながらの進行を結構楽しんだりしております。

※ 明野町は旧名らしく、統廃合で現在はいずこかの自治体に吸収されております。
明野町の現況は把握できておりません。ご了承下さいませ。



↓ カブト虫を怖がる黒ラブのクロ

2008.8.1

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