Automatic Vehicle Monitoring System入門
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最近、年頃のせいか、法人タクシー時代を懐かしく思うようになってます。 今、思えば楽しい日々でした。 その過ぎ去った日々が記憶から消えさる前に書き記す事にしました。 バブルの余韻が少し残る20数年くらい前の昔 二十代半ばにして理想的な自営業である個人タクシー開業を決意。 そして開業するには「法人タクシー経験10年」の経験が必要と知り、 慌ててその資格を得る事を目的に、法人タクシー業界に飛び込んだ。 選んだのは東京無線協同組合に加入する保有車両100台足らずの小さな会社でした。 右も左もわからない業界でしたので、選考基準は「車通勤可」である事と、電車で通勤する場合は 自宅最寄り駅 (当時は江古田)より下り方面に職場の最寄り駅がある事。 (満員電車通勤が嫌いだから) 程度で選考に入りましたが、新聞の求人欄の 「無線だけで仕事できます。」と呼びかける東京無線グループのキャッチコピーに引っかかり、 東京無線グループである事も選考基準に加えて決定しました。 在籍中は何が一番たのしかったか? なにより無線配車を受けるのが楽しかった。 少し掘り下げます。 最初は新人乗務員が必ず乗らされる、一般無線車(相互音声配車、4波から6波の3波編成)に乗ってましたが、 1年を過ぎたくらいからマイクで応答する音声無線では物足りなくなり、一年を過ぎた位からAVM無線車(Automatic Vehicle Monitoring System)の担当車を割り当てて頂きました。 AVM無線車はマイクを握ってモシモシと応答するのではなく、サインポストを活用した位置情報(現在のGPSに遥かに劣る)や空車、実車、迎車等の情報を全て自動で基地局に送信し、基地局の端末は全ての移動局の動体を把握してます。 夜間20時からの基地局は把握した動体情報を元に、各エリアからオーダーがある都度、そのエリアに待機する車両を一方的に配車してきます。 全てボタン操作で基地局とやり取りし、当時としては最先端の技術を駆使した配車方式だったと思います。 そのAVM車に乗れる事になった訳で、大変うれしく思った事を思い出します。 担当車の無線番号は 1809 当時、東京無線協同組合のAVM車は周波数の異なる1波から3波の3波編成で構成され、 1つの波には確か520台が振り分けられてました。 1809は第1波で、私の所属会社からは7台位が1波の車両でした。 東京無線とは中小企業が多数参加する協同組合でありますから、その性質上、1波を構成する520台は 東京無線協同組合加入数十社から数台づつが振り分けられた各社混合の車両群で一つの波を構成されてました。 1809 恐らく生涯忘れない4桁です。 (暗証番号には一切使用してません) また、相番が無線配車ばかりを受ける方で、1波の中で1809は社内では知られた番号だった事も09の担当者と決まって嬉しかった一面だったかもしれません。 社内で知られる。 当時は現在のデジタル方式ではなく、アナログ無線でした。 夜間の繁忙期はオペレーターは叫び続け、波の640台がみんな聞いてます。 各車は各種スイッチで応答して配車が確立されていきます。 AVM 操作部 まん中の四角い表示部にエリア番号や滞留時間が表示されてました。(画像は電源Off時) 四角い表示部を挟んだ左右にあるレバースイッチ。 左側のレバーを下に押せば「応答」信号を発射! 左側のレバーを上に押せば「仮応答」信号を発射! 実車時にも仮空車で応答可(禁じ手ですが、オペレーターでムラあり) 右側を下に押せば「了解」信号を発射! 右側を上に持ち上げるように押せば「再送」信号を発射!(オペレーターにむっとされます) |
例えば 築地エリアの区画内に空車で進入し、空車の動体データを基地局に自動送信 (ボーリング) その直後に築地エリア内でオーダー(例えばBブロック)が入った場合、基地局は築地エリアで端末のキーボードを叩いて適車を検索 (後入り優先配車) 最も直前に築地エリアでボーリングされた1809を自動的に選びだし、配車してきます。 移動局の無線端末操作部には「配車」ランプが点灯し、ブザーがピーピーピーと三回鳴り響きます。 困った事に、このピー音に病みつきになるのです。 1809が適車と表示された画面を見ながら オペレーターは オペ 「1809は銀座Bブロック。モリタ様。 1809そうぞ」 てな具合に語りかけてきます。 こちらには上のコメントが無線端末から聞こえますので、 聞き取り終えると、了解スイッチを押しますと、基地局のモニターには「1809 OK」と表示された画面を目視確認したオペレーターは オペ 「1809了解」 と、コメント これで配車が確定し、迎車進行する感じです。 それだけの操作ですが、明けて会社に戻ると、「何時のBブロックはどこに行った?」とか同僚に聞かれる訳で、 毎日のように配車を受けてると、「あいつはよく取る。」「1809はうるさい」となる訳です。 そこも無線が面白かった事だと思います。 そんなAVM車の担当車が決まったもんですから、仕事に出かけるのが楽しくてしかたなかったです。 しかし、、、、 すぐ、なかなか上手くいかない事を思い知らされました。 先に書いてますが、AVM車に乗る前の担当車は一般無線でした。 オペレーターの呼びかけに対し、こちらもマイクを握って声で応答する極めてクラッシックなやり取りです。 そんなやり取りですから、一般無線の事は「もしもし無線」や「ガラクタ無線」なんて呼ばれてました。 ただ、一般無線にはライバルが少なくけっこう取り放題でした。しかし、AVMの言わば一軍に対し、 一般無線は配車効率の悪い二軍の類ですから、配車本数で特に都心部の配車本数はAVMより遥かに劣ります。 必然的に無線好きはAVMに乗るのが普通でしたから一般無線にはライバルが少なかったので取りやすかったのでしょうが、 当時はそうとは思わず、「こりゃあAVMに乗っても僕ならやっていける。」と、一人感じたりしましたが、甘かった。 担当車を得たからには無線番号をオペレーターに印象つける為にも日中は無線を追っかけソコソコ取れはしました。 昼間はポーリング配車ではなく、応答方式です。オペの呼び出しに対し、左側のレバーを下に押して「応答」信号を発射方式 それで取れれば後のやりとりはポーリング配車と同じです。 例 落合斎場からオーダーの場合 オペ 「落合〇番地どうぞ」 1809 Kスイッチで応答 基地局モニターに1809表示 オペ 「1809了解! 1809は落合〇番地で盛田様、1809」 1809 OK(了解)スイッチ 基地局モニターに1809 OKと表示 オペ 1809了解 配車確定 こんな感じです。 ちなみに0番地は斎場の隠語 (他に桐ヶ谷〇番地、幡ヶ谷〇番地等多数存在) 都心部ではなくライバルの少ない郊外。 昼間は道も空いていて裏道も多数ありますから、広域をカバーしてました。 郊外無線の所謂ローカル無線で本数を稼ぎつつ夜間までは居座って、 ポーリング配車開始時間に合せて都心に出て行く感じでした。 その、夜間の都心部が情けないくらいサッパリなのです。 無線機からは配車するオペレーターの声が途切れる事ないのに、自分は配車にならないのです。 金曜日と雨の日とかは配車になったものの、あれはライバル車が出っ張らって居ないから配車になってたのもで、 配車になって当たり前の状況ばかりでした。 通常の状況ではどうやれば配車になるのか? 最初は会社の所長に相談しましたが、「無線なんかやらんでいー」と、言われました。 しかし何の為にAVMに乗り換えたかわからないので、 相番に相談したところ、 「なんだ。そんな事も知らずにAVMに乗ってんのか?」 と、言われて始めて基礎の大切さを悟ります。 続く ひとりごとに戻る |