芸能関係乗車録
失礼でなければ

早いもので、個人タクシーを開業し、来年で9年目です。

その前に法人タクシー勤務を10年ですから長きに渡って今の仕事を続けられております。 これも偏に、皆様方からの多大なるご支援ご鞭撻の賜物でございます。

さて、長きに渡って今の稼業を続けてますから都内の道はバッチリで、 利用者様にご迷惑をかけないレベルには、
それなりに到達しているものだと自負しております。



始めた当時を振り返ると、サッパリでした。 そして、あの頃は若かった。

また、今まで幾多の芸能関係者をお乗せし続けておりますので、 珍しく芸能関係者のご利用録など…



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お一人目

当時、誰もが憧れた、おフランスにございます花の都パリに行けたクイズ番組「アタック25」
名司会者て知られ、大俳優でもある児玉清さま



現金決済の少ない芸能関係の方にしては珍しくチップを頂戴した。

お台場から首都高速で新宿副都心までのご利用で、お決まりのチケット決済だったが、
それとは別に現金で3000円手渡された。

道中は日本食文化について話が盛り上がって「アナタとはウマが合う」と、道すがら何回も申されてたが、 降車時に真顔で「失礼でなければ受け取ってほしい」と、言われた事を昨日の事のように思い出します。 紳士のお手本みたいな方で、本当にカッコいい紳士だった。


なぜに三千円かはどーでもよいとしても、 当時の感想は 「実るほど頭を垂れる稲穂かな」 かな。



以後は「失礼でなければ」の引用を乱発し、立場の弱い方ほど懇切丁寧に接するよう心がけております。



次に今まで一番光栄で、恐れおおくて恐縮しまくってしまったお方
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お二人目

 大滝秀治さま

 正直、児玉さま同様、永遠に日本の映画界を代表する俳優のお一人だと思ってます。 主役よりは名脇役の印象だが、あの方のセリフの重さや、存在感を皆様もご承知のはずです。

タワー時代に丸の内から首都高で成城までご利用頂きましたが、大大名優なだけに緊張しながら世間話をしておりました。 映画「影武者」の話で盛り上がった事を思い出す。私があの映画で一番お気に入りの場面は、大滝さんが単騎で馬に乗って現れ、 ゆっくり門に付けるシーンです。と、お世辞なしで申し上げた。



美しい背景の中、綺麗な姿勢でゆっくりとした馬に乗る姿が実に美しい。



すると気を使ってくだされたのか、 セリフ調で「あの頃は若かった。」ニコっ。と申された時は心底、「なんてカッコいい人なんだ」と思ってしまった。


「あの頃は若かった」

活字だとなんて事ないよくある世間話の一文ですが、あのお方が口にすると、「魂」が宿る。 言霊に圧倒された事を想い出す。

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お気づきかと思いますが、児島さんは昨年の6月。大滝さんは今月に入って他界された。日本映画の幅は確実に縮小した。

お二人とも現世にはおられないが、永久に忘れはしないだろうし、昨日は大滝さんを偲んで「影武者」を見た。 普段は会わない方々だけに何も変わりはしないだろうが、私のなかでは生涯生き続けられる事だろう。 現世で会う事は叶わないが、来世で会おう。


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後記

ブログ等でよくある芸能関係のネタですが、当方もよく、興味本位で問い合わせをされます。 「芸能人は誰を乗せた?」とか、…

守備義務などがございますので、個人タクシー生活では公人を覗き、特定の個人がどーしたこーした。と言ったような記事の取り扱いを、 控えさせて頂いておりますが、今回は偉大なお二人を偲んでみた次第です。


 心からご冥福をお祈り申し上げます。

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2012.10.10

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